2021年8月1日日曜日

難思の弘誓と無碍の光明

 『教行信証』総序に曰く、
 「難思の弘誓は難度海を度する大船、
  無碍の光明は無明の闇を破する恵日なり」
と。『教行信証』全体は総序に摂まり、総序はこの二句に摂まる。
 親鸞聖人が生死出べき道を見つけられた、その大道はすなわちこの二句である。一切衆生の往生の大道もまたこの二句である。「これより外に佛法なし」と思っていただかぬと勿体ない。信心も確立しない。

 瑞劔が桂利剣(かつら りけん)先生の弟子として入門したのは、瑞劔が三十八歳の年、八月二十四日であった。始めに聞いたのは森尾則如(もりお そくにょ)師のことであった。
 森尾則如師は、島地大等(しまじ だいとう)師、前田慧雲(まえだ えうん)師と共に、天台学において「三羽烏」と言われるほどの大学者である。
 森尾師は真盛派(しんぜいは;滋賀県坂本にある天台宗の一派)の大学の学長であった。その森尾師が桂先生の許に来たり、二ヶ年間、真宗学を習われた。
 桂先生は、始めに総序の文を授けられた。森尾師は始めの二句を頂いて感激され、膝を叩いて讃嘆された。

 瑞劔入門して翌年、亡父 久太郎が夢に現れ、
  「最三(瑞劔)良く聞け、
 難思の弘誓は難度海を度する大船、
 無碍の光明は無明の闇を破する恵日なり。
 ここじゃぞ、これじゃぞ」
と二回繰り返して、スーと消えた。

稲垣瑞劔師「法雷」第32号(1979年8月発行)

2 件のコメント:

土見誠輝 さんのコメント...

難思の弘誓は・・・、無碍の光明は・・・、
何度も何度も教えていただくことが、
本当に有り難い事ですね。

ありがたい・・・、ありがたい・・・、
という事ですね。

光瑞寺 さんのコメント...

そうなのですね、佛徳讃嘆のままが報恩感謝になっておられるのですね。
そしてまた、ご自身が慶ばれるままに私たちへもお勧め下さっています。

よびごえの うちに信心 落處あり

 佛智の不思議は、本当に不思議で、凡夫などの想像も及ばぬところである。佛には佛智と大悲がとろけ合っておる。それがまた勅命とも名号ともとろけ合っておる。  佛の境界は、妄念に満ち満ちた私の心を、佛の心の鏡に映じて摂取不捨と抱き取って下された機法一体の大正覚である。もはや佛心の鏡に映...