佛の冥加を有難く思う心だにあれば、たとい身は卑しく家は貧しくとも、自ずから衣食住そろいたることを喜ばるるものであります。
孔子聖人は、
「節を制し度を謹めば満つれども溢れず、満つれども溢れざれば、長く富を守る所以なり」
と仰せられ、徒費を省き礼を守ることを教えられました。
また叡山の大徳 元三大師(良源上人)は、出離菩提にのみ志しておられましたが、却って至尊の帰依を得て、一山は隆昌の絶頂に達しました。大師これを見て懼れ怪しみ、疑心の色ありしが、やがて「菩提を勤め求むればすなわち現世の悉地を成ず」といえる金言を見出だして、わずかに不安の念を払われたと伝えられています。
冥加を重んぜられた方は、蓮如上人を以て日本佛教史上第一人者とせねばなりますまい。上人は何物もこれ佛物であると思って大切にせられました。例えば廊下に落ちている紙屑までも拾って頂かれました。
ー 桂利劔師の法語
稲垣瑞劔師「法雷」第84号(1983年12月発行)
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